うりうちゃんの日記

拗らせイギリスオタクの普段の日記

本を読みました 『空飛ぶペンギン』

こんにちは。うりうちゃんです。

先日体調が全く安定しないので、病院に行きました。

待ち時間にとりあえずと思って持ってきた本を読み終わってしまいました。

 

 

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『空飛ぶペンギン』

上村佑、宝島社(2013)

 

 

 

 

 

海と宇宙とペンギンが好きなのでタイトルと表紙で借りました。

そんなに新しい本ではないので図書館にあるんじゃないかと思います。

私は大学の図書館で借りました。

 

 

 

 

主人公は就職活動で公務員になり、地元山形県で働くことになった青年です。

 

彼が赴任した小さな集落では人口の減少に悩み、

村興しを計画する県庁職員と地元村長が対立していました。

 

 

青年の上司にあたる県庁職員の女性は、クラゲで集客に成功した水族館の事例を聞き

自分たちはペンギンを中心にした水族館を作ることで村に活気を取り戻そうと考えます。

 

少子高齢化の波を受け閉校が決まった地元の高校の校舎を活かし、

ペンギンたちとともに村に残ることを決めた高校生や教職員の人々と共に

小さな村の未来を切り開いていきます。

 

 

 

 

 

 

 

字で読むペンギンも可愛い

 

 

ペンギンの可愛さはそのうおちよちした歩き方となだらかな流線型のシルエット、

白と黒が中心のカラーリングと水中でスイスイ泳ぐ姿のギャップにあると思っています。

 

どれも映像的な情景であり、文章で描かれるペンギンというのは珍しいものです。

 

ペンギンはタイトルからも分かる通り、

語り手ではなくとも今作品の1番の主役です。

 

 

あの形容し難い鳴き声も、文字で絶妙に再現されています。

 

実際に水族館に行く機会が掴めなくても、

ペンギンを眺めているような暗くて落ち着いた煌めきがあります。

 

 

 

 

 

 

シンデレラにはなれなくても、職場のいちスタッフではいられる

 

 

近年は新型感染症による景気の悪化の前に、少子高齢化による将来への期待の低さ、

改善されない低賃金長時間労働、男女間の不当な賃金格差、

男女間以外の婚姻が認められない社会生活の不自由さのおかげで

 

幼い頃聞いたシンデレラストーリーや昔話のゴールデンドリームを信じることは難しい時代になっています。

 

 

今作では新卒公務員や高齢な村長、後輩を持った県庁職員に暗い未来を背負う高校生など

様々な世代、様々な職場の様々な事情を抱えた登場人物ひとりひとりに焦点が当てられ、

それぞれの行いが大きな結果につながっていく様子が描かれます。

 

誰か1人の成果ではなく、

それぞれがそれぞれにできることをこなした結果の結末があるのです。

 

 

そのプロセスが丁寧に描かれていることによって、

何か劇的な変化が起きて幸せになる想像はできなくても、

自分の目の前の人生が何かにつながって明日がくる、という想像ならできます。

 

 

 

 

 

最後に:やり方次第でペンギンだって空を飛べる

 

 

ペンギンは飛べない鳥として有名ですが、

彼らに空を飛ばせるために小さな村落の住民が手を尽くして徐々につながっていきます。

 

 

人間だってそれぞれ分業化の進んだこの世の中で得意なことも不得意なこともありますが、

空をすいすい泳ぐペンギンをふと想像して、

ちょっとずらせばできるようになるんじゃないのかな、などと想像してみるのです。

 

 

 

 

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